この2日間、燃料電池開発情報センターが主催するフォーラムに出席していた。この1年間で家庭用・業務用を対象にした1〜数kWの燃料電池については、いままで30年ほどかかった開発のトンネルを抜けられるかも知れないという感じをやっと持てるようになった感じがする。ただ、これには少し追加的コメントが必要だ。私が前職時代にフィールドテスト責任者として痛い目にあったリン酸型電解質燃料電池については、性能・耐久性についてはほぼ完成の域であり、コストだけが残された課題になっているという面では、商品化に至ったと言っても良いだろう。下水汚泥の消化ガスを使う設備としても使われ始めているし、コスト的にも一般のコージェネレーションよりもまだ高いが、補助を受ければ何とかできる段階に来ている。
世界では米国のUTCと日本の富士電機だけしか商品化に成功していない。今回のフォーラムで知ったが、富士電機は2010年には年産50台に目標を設定しているというから意欲的だ。すでに8万時間(10年)以上の運転をクリヤーしている。課題は4万時間で燃料電池の電池部本体の交換を含めたオーバーホールを行わねばならず、このコストが大きいことである。米国ではリン酸型燃料電池の規模を数百キロに上げて、バックアップ用の電源として販売しようとしている。設備単価としては高いが、以前にも述べたように、電力供給の安定性が悪い米国では、データセンターのように絶対停電をしてはいけないところの電源として、事業リスク回避コストが高くなっても良いということでビジネスになるのだ。
日本の電力の信頼性は高いが、それでも停電はある。それによる被害額が大きい業種でこのタイプの燃料電池の設置に関心が高まってほしいものだ。課題である途中のセル取替コストについても、当初設備への補助と同じようにユーザーの負担を軽減する施策が準備できれば、環境面でも優れ、発電効率の高い数百kWの電源として普及するだろうと期待している。