効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

新しい熱の使い方・熱の輸送

コージェネレーション、あるいは炉やボイラーなどの機械設備からの排熱を有効に利用するためには、そのような設備が設置されているところに排熱量に応じた熱需要がなければ、その熱は大気中に放散させて、ということは使わずに捨ててしまわざるを得ない。熱は電気のように遠くに運ぶ手段がなかったからだ。排熱で水などの熱媒体を加熱しても、その場所に熱需要がなければ、せいぜいお隣に配管で送って熱を売る事しかできなかった。
ところが、最近、三機工業の「トランスヒートコンテナ」と、神戸製鋼所神鋼環境ソリューションの「サーモウエイ」という、熱を数十キロほど離れたところにコンテナで運ぶ方式がほぼ事業として成立するところまで来たという新聞記事が出た。どちらも熱媒体として蓄熱の温度が水の100度より高い熱媒体を使っているようだ。水を使うと、いくら温度を高くしようとしてもせいぜい85〜90度程度しかならず、長距離輸送の間に熱が逃げて温度が下がり、有効に使えなくなってしまうからだ。
神鋼の新システムは蓄熱材に人工甘味料のエリスリトールを使って熱回収率を90〜95%に高める。40キロ離れた地点への輸送でも90度以上の高温水を取り出すことができる。従来方式では熱回収率が50〜70%で、吸収式の冷房への利用も困難だった。三機工業の場合には、記事によると高温で液状になり、熱を放散すると固体になる何かの化学物質を使っているようで、約1週間はエネルギーを保存できるとしている。この事例として、下水汚泥焼却施設で生じた排熱を市民体育館に運び、暖房に活用しているのが紹介されているが、この熱媒体の名前はでていない。いずれにしろ水以外の物質を使うのが面白い。調べてみると、エリスリトールは融点が119度というから、三機工業の使う熱媒体も同じものかも知れない。両者ともに、熱を出すところと受けるところに熱交換器さえあれば良いはずだ。
自宅の燃料電池でも熱の需要と電気の需要の時間帯がマッチしないし、どうしても熱が余ったしまう。これを溜めて、熱が必要なところに運ぶことができれば、総合的な熱効率を大きく上げることができるはずだ。今後このような熱の長距離移動事業が環境価値を評価したインセンティブも加味して採算にあうケースが増えることを期待している。