効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

企業の炭酸ガス排出量の算定と電力

昨日22日の日経新聞朝刊一面に出た記事だが、企業が自社の炭酸ガス排出量を国に報告する際、電気の使用に関わるものについては、自家発電は別にして、普通は電力会社から購入する電力に定められた係数を使用して計算する。その計算の基礎となる電力各社の発電量当たりの炭酸ガス排出量に、沖縄電力を除く9電力の間で1.87倍の開きがあることが明らかになったという。
現在、日本全体で工場や大規模商業施設など約1万3千カ所の事業所は、2006年度分から温暖化ガスの排出量の報告を義務づけられれている。1kWhあたり炭酸ガス排出量が一番低いのは関西電力で0.358キログラム、中国電力は0.668キログラムで関西電力の1.87倍。(ただし、法律では上限を0.555キログラムにしてあるそうだが、それでも1.55倍)
沢山電力を消費する企業は、制度上は購入する電力を供給する電力事業を選択することができる。いままでは新規参入した発電事業者と従来の電力会社との間でコストが目安となって選択が行われていた。しかし、企業に炭酸ガス排出量を減らすことが求められるようになると、これだけ電力会社の間で排出量に差が出ると、供給区域を越えて、炭酸ガス排出量の係数が小さい電力会社から購入したいという企業が現れても不思議ではない。しかし、それがどの程度実現するだろうか。現在では、電力会社の間を結ぶ送電線の容量が非常に小さいために、大口のユーザーが他の電力会社エリアからの調達をしたいというケースが増えると、すぐ一杯になってしまって実現しないだろう。
炭酸ガス排出量が低い電力会社は、原子力発電による発電量の比率が高いところとなるのは当然だが、これほどの開きが出ると、ただ、電力会社間の融通のための送電線容量が少ないからという理由で断るのがどこまで通用するだろうか。これは、北海道や東北の風力発電所からの電力を東京や九州で買いたいと思っても、極めて難しいのと同じ理由だから、日本の送配電構造そのものを見直さないと根本的解決はできないのだ。
日本全体の送配電網が、炭酸ガス排出削減の見地からどうあるべきか、地域の送配電網のループ化も含めて具体的な対応策が検討されてしかるべきだろう。勿論コストがかかることになるが、それがどれほどの規模になるかを公開して、安定供給も念頭に置いた議論が必要な時期になったのではないか。電力会社任せで済ませる問題ではない。