電気自動車の蓄電池から電力系統に必要に応じて電気を逆流できれば、系統の安定化に貢献できるとはよく言われてきたが、その実証試験が初めて行われたそうだ。豊田通商と中部電力は2018年11月14日、「Vehicle to Grid(V2G)」実証実験を同11月12日に国内で初めて開始したと発表している。実験は愛知県豊田市の豊田文化会館の駐車場で実施。2018年10月4日には、東北電力と日産自動車、三井物産、三菱地所が仙台市で「V2G実証プロジェクト」を開始すると発表しているが、「東北電力らの実験は、EVからホテル、ホテルから電力系統と接続している点で我々の実験とは異なる」(中部電力)として、EVから電力系統に直接逆潮させたのは国内ではこれが初めてだとする。今回は単なるV2Gではなく、電力事業者、または「アグリゲーター」の指令で、EVに充電するか逆潮するかをその出力も含めて1秒単位で制御する「Virtual Power Plant(VPP:仮想発電所)」の実験にもなっているそうだ。
実証実験に用いたシステムは、中部電力所有のEV2台(共に三菱自動車の「i-MiEV」、充放電の最大出力はそれぞれ5kW)、椿本チエイン製のV2G対応充電スタンド(5kWまでの充放電に対応)2基、これら充電スタンドと電力系統をつなぐ電線、電力系統側に設置した電圧や周波数などの測定器、および、VPP用サーバー機と専用アプリをインストールしたスマートフォンなどからなる。 VPP用サーバーは、豊田通商が出資した米国のベンチャーNuvveを利用しているとのこと。
電気自動車が普及すると、今回のような制御を、充電するタイミングにも利用することが重要となる。ある地域にEVが集中して普及したときに、料金が安い深夜電力の時間帯に一斉に充電すると、それこそその地域で大停電を起こす事もありうる。米国では既にそのようなケースが起こっている。ただ、EVのユーザーと電力事業との思惑は一致しないことが多いから、どのようなインセンティブを準備するかよく考えないと、実効性のある制御が出来ない可能性もある。電力料金体系もEVの充放電の制御を念頭に置いたものに変わっていくだろう。