効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

熱効率60%のエンジン

エンジン技術の開発は極限まで来ていると思っていたのだが、そうではなさそうだ。早稲田大学の内藤 健 教授が、エンジン単体の熱効率を従来比約2倍の60%レベルまで高められる新たな圧縮燃焼原理を発見したと報じられている。従来の一般的な内燃エンジンの熱効率は30%からせいぜい35%だから、この新しい効率実現が商品化されれば、内燃エンジン関連ビジネスの世界を変えるかもしれない。
新しい原理は、(1)燃焼室内部を減圧して真空状態に近づけ、外部大気との圧力差で燃焼室内に空気と燃料を音速に近い速さで高速吸引する。(2)複数の噴流口から燃焼室中心部の1点で多重衝突・圧縮させる。(3)多重衝突を繰り返すことで、高圧の燃焼による高効率・高出力が得られる、というものだ。音速の気体噴流16〜30本を衝突させると、10〜30程度の圧縮比が可能というシミュレーション結果が出ているそうだ。真空状態にするにはエネルギーを使わなくてはならないのだが、それをピストンの上下に回数だけ繰り返す必要があるだろうから、それに必要なエネルギー量は大きくならないのだろうか。
この他に、断熱効果も出るという。複数の噴流は、燃焼後の高温ガスも包み込み、燃焼室の中心部に閉じ込めることを確認している。高温ガスがエンジン側面に接触しないことから、エンジンを冷やす機構を簡素化できる。さらに燃焼騒音や振動も中心部で閉じ込めて、外部に出にくくする可能性もある。内藤研究室では新原理を基に試作エンジン(排気量50cc程度)を制作してガソリンを用いた燃焼試験を始めたというから、新原理がどれほど実証されるかが楽しみだ。