効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

産業用リン酸型燃料電池

富士電機が今秋から産業用燃料電池の量産を始めると今日の新聞に報じられている。この春に行われた燃料電池関連のセミナーで、ある程度の内容は把握していたが、本格的に営業を始めるというのは嬉しいことだ。というのは、1980年前後に自分が関与していた燃料電池の実証試験に使われたのがこのリン酸型燃料電池で、30年してやっと商品化したと言うことだ。この形式のものは作動温度が高く、いま家庭用や自動車用に開発されている固体高分子型のものとは異なる。今回報じられているのは100キロワットの出力を持ち、排熱温度が高いためにプロセス蒸気や大量の高温水を使う所に適している。中核となる燃料電池本体については4万時間の耐久性を実証しているようだが、触媒に白金を使わざるをえないためになかなかコストダウンが難しい。稼働の信頼性が高いし、発電効率も40%ほどあるはずなので、下水処理場で発生する汚泥をメタン化して燃料にする、あるいは、ホテルから出る大量の生ゴミをメタン化するなどして利用すれば、環境価値も含めたコストは競争力が出てくるだろう。まだ補助金なしには商品化は難しい。ユニットコストを従来の半分にすると聞いていたが、何とか成功したのだろう。
米国のUTC社と富士電機しかこの形式の燃料電池は商品化していないので、何とか順調な普及をしてほしいと思う。自分が直接関与していた形式の燃料電池だけに思い入れがある。価格は一基1億円で年間20基の販売を目指しているという。課題は10年間使用しようとすると、途中で一度燃料電池本体を取り替えないといけない。このコスト負担も計算すると販売するのも容易ではないだろう。10年の耐久性を持つセルを開発してほしいものだ。