効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

スマートグリッド

最近新聞などに「スマートグリッド」がよく論じられるようになった。特に、オバマ大統領が景気の下支えも兼ねた政策として、110億ドルという巨額の予算を米国の送配電網をスマートグリッド化させようとしたことがきっかけのようだ。賢い送配電網という意味だが、その定義は必ずしもまとまってはいない。ITを使って送配電網をより精緻に制御しようということだとする論もある。それに従えば、停電がほとんどない日本の送配電網はすでにスマートグリッドだと言えるのかもしれない。しかし、世界的に論じられて定まりつつある定義は、ITの技術を使って、自然現象によって変動する自然エネルギーを取り込み、個々の電力消費者の動向もきめ細かく把握して、必要ならば需要を抑制するように制御することによって、もっとも二酸化炭素の排出が少なくなるようにするということのようだ。
需要の制御は、発電能力が不足気味で、送配電網も老朽化している米国ではかなり前から試みられていたものだから、米国の電力業界にとって目新しいものではない。ただ、それを全需要家を対象にできるように、双方向通信ができる機能を持った電気メーターを取り付けることもオバマ政権の施策に取り込まれたことが大きな意味を持っている。ヨーロッパでもスマートグリッドの推進がEUレベル、あるいは各国レベルで推進することが政策として打ち出されるようになっている。イタリアなどはすでにスマートメーターが3千万個ほど取り付け済だから、スマートグリッド化に向けて現在進行形なのだ。ヨーロッパには風力発電が多く稼働しているために、その変動で送配電系統が混乱しないようにする必要があって、高度なIT技術を使っての制御が課題となっている。
日本では風力の導入は抑制されているし、発電能力も送配電能力も余力があるから、世界の定義に従ったスマートグリッドの導入に電力会社は関心を見せていない。しかし、それで良いのだろうか。