効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

■直流の利用拡大を可能にする新技術

エジソンが発電設備を開発したとき、それから出る電力は直流だった。そしてその電気は当初白熱電球を点灯するのに使われ、ローソクや灯油ランタンを駆逐することになる。だが、その後テスラが交流発電方式を開発し、交流の昇圧を可能にする変圧器が開発され、電力供給は次第に直流から交流に切り替わり、今では世界で使われているのは殆どが交流電力である。直流と交流のどちらが良いかについて当初論争があったが、直流を昇圧する技術がなかったために、遠距離に送電できず、昇圧して遠距離まで送電できる交流が世界の電力供給を支配してきた。

だが、送電するときの損失は直流の方が交流より少ないために、直流を昇圧、減圧する技術が開発されて後、遠距離送電には高圧直流が利用されるようになっていることは、これまでにも述べたことだ。だが、交流の利用が世界の隅々まで行き渡り、交流発電機が主流であるために、電池を利用した電気設備以外はまだ交流の世界となっている。だが、それを打破する可能性のある技術が最近開発された。その技術とは、スイス工科大学ローザンヌ校が発表した100kW規模の小型で高効率な半導体変圧器である。これくらいの規模の変圧器というと、身近にあるもので表現すれば、少し大型の柱上トランスに相当する。そして、直流(DC)、交流(AC)の両方に対応しており、入力・出力について、AC-AC, AC-DC, DC-DC, DC-ACの変圧ができ、発表の中に記述されているように、スイスのアーミーナイフのように万能なものだ。

この変圧器が商品化されると、これを並列に末端の変電所に設置し、そこから需要端に向かって出る現在6,600ボルトの交流電力を直流にし、建物などにまで届け、最終需要に向けて低圧直流に落とすことができるようになる。そうすると、太陽光発電燃料電池のように、本来的には直流を発電する電源の接続利用が非常にやりやすく、また、全体の効率も大きく上がることになる。この新技術が早期に商品化されることを期待しているが、それと同時に、直流を利用するための電圧やプラグ、スイッチ、交流供給との分離などに関する規格の標準化ができていなければならない。国際直流学会でこの標準化が進展しつつあるようだが、まだそれが最終規格の設定には到達していないらしい。

だが、直流の変圧がやりやすくなるとすれば、末端での電力消費効率やそこへ電気を届ける送電の損失も大きく下がることになる筈だから、規格の設定を急ぎ、直流送配電が基盤となる社会に変化するメリットは極めて大きい。直流利用の拡大に向けた施策が具体化することを期待している。

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