効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

■木桶の復活

酒の仕込みに使う木桶は、スギ板を組み合わせたものだから、寿命が長いものではないと思っていた。また一方では、木桶を使わないと酒の味の複雑さ、特徴を維持できなくなるのではないか、とも感じていた。酒造りにも木桶ではなくステンレスやホーロー引きのタンクに置き換わると、日本酒の特徴ある複雑さが失われることは避けられないようにも思えた。

だが、この木桶を復活させようとする活動がいま始まっているそうだ。その発起人は造り酒屋にいた米国人女性だという報道記事を読んで、日本人が諦め始めていた、あるいは気づかなかった伝統の維持が外国の人の手で始まったのは喜ぶべきことか情けないことか、戸惑いも感じた。

木桶は管理が大変だが穏やかに熱が伝わり、のびのびと天然酵母が発酵する良さがある。桶の木肌にすみ着いた微生物が作り出す味は何物にも代えがたい。見直すきっかけは異国の女性だが各地に賛同者が増え、50以上の酒造場や醤油(しょうゆ)蔵が木桶仕込みを復活させているとのこと。六尺桶のような大桶には良質な杉や竹が要り、大桶職人の育成も始まっている。昔からの酒造りの蔵には、そこ独特の酵母菌が住み着いていて、それがそこの酒の独自性が生まれると聞いていたが、木桶にも同じことが言えるのだろう。

日本の桶材は杉などの針葉樹であり、幅の狭い板の断面に穴をあけ竹釘(くぎ)を使って接続する。断面の削り方の精度と角度により、平らな底板や湾曲した側(がわ)板を作り出す。最後は竹のタガを数人がかりでたたき込み締める。液体を入れると板は膨張し、隙間をふさいで漏れない。充填材は不要。木の性質を生かした優れた技術だと紹介されているが、この工作をする技がなくなれば、杉板や竹があっても木桶は造れない。その職人もこの活動と共に戻り始めたようだ。

酒蔵が新調した桶を数十年使うと桶屋に戻される。解体され傷んだ板を選別し取り換えて組み直され、竹タガも組み替える。その後、味噌や酢、醤油屋に運ばれ醸造桶に転用される。循環させながら100年から150年使われたというのも驚き。今で言うリサイクルが完璧に酒造り、味噌造りに組み込まれていたということだ。