効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

■レアアースを使わない電気モーター

磁石の素材としてレアアースは不可欠なものだと思っていた。だから日本のモーター製造産業は常にその確保のリスクがあるとここで述べたこともあるが、レアアースゼロのモーターをホンダが開発したと知って仰天した。

HVなど電動車の駆動モーターには、世界最強の磁力を持つ永久磁石が搭載されている。従来、その磁石にはレアアースの一種である重希土類(ジスプロシウムやテルビウム)の使用が不可欠とされてきた。永久磁石には高温になると磁力が低下する性質があり、一定の温度を超えるとモーターが働かなくなってしまう。ところが、走行中の駆動モーターともなれば、100度以上の過酷な高温環境で使用されるもの。そこで、ホンダやトヨタ自動車などメーカー各社は、永久磁石に重希土類を数パーセントから10%(重量ベース)添加することで耐熱性を高めて、磁力の低下を抑えてきた。だが、この重希土類が生産される地域が限定されているために、中国などの買い占めや地域支配によって、価格が急騰するようになっている。

この素材を使わない磁石の開発は不可能だと思われていたのだが、それを可能にするのに成功したのがホンダだったと紹介されている記事を読んだ。10年の開発期間の後、2016年にホンダのHV「フリード」に、世界初となる「重希土類フリー駆動モーター」が採用されたそうだ。モーター回転子の「ローター」に組み込まれる磁石の配置を変えたり、ローターの形状を変えたりすることで、磁石の耐熱性を高め、これを実現したのだった。それを可能にしたのは、出来るという確信だったのだろう。

このモーターが他の機械設備などに普及すれば、素材の輸入リスクをなくすることができる。輸入依存度の高い資源を多く持つ日本としては、これを減らす努力を絶えずしていかなければならないが、そこには開発技術者の確信が重要なのだろう。