効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

■急増するか水素利用

水素は燃焼時に二酸化炭素(CO2)を出さないクリーンエネルギーとして期待が大きいが、水素が化石燃料を分解して入手したものであれば、比較的クリーンだとしてもグリーン燃料とはならない。その意味で、再生可能エネルギーを利用して水を電気分解する方式への期待は大きい。しかし、その設備コストがどの位か具体的な数字は知らないが、可成り国などの助成がないと事業性は当分出ないだろう。

水素の利用として実用化しているのは燃料電池で、水素を直接燃料として供給する方式も、燃料電池自動車だけでなく、フォークリフトなどにも普及しようとしている。とはいえ、水素を直接タービンなどの燃料として使えれば、消費量は急増するだろう。いま兵庫県でその方向に向けた実証試験が進んでいる。その一例が川崎重工業大林組などが神戸市の人工島・ポートアイランドで実証している水素発電所。18年4月に市街地で世界初という水素100%燃料での発電に成功している。電力と熱をスポーツ施設、病院などに供給した。水素は天然ガスに比べて燃焼温度が高く、窒素酸化物(NOx)が多く発生する。そのため燃焼器という発電設備の心臓部で水を噴射し、NOxを規制値以下に下げている。燃焼速度も速いため燃焼器の改良や燃焼方法の工夫などを各社が競っている。

川重などは19年度、燃焼効率を上げるため水を使わずにNOxを低減させる技術の開発に入る。30年に国内で大規模な水素発電所を実用化させる目標をかかげ、研究が今後加速する見通しだという。発電での水素利用の実用化に向けた取り組みは県南西部の高砂市でもある。ガスタービンなど火力発電機器の国内最大手、三菱日立パワーシステムズMHPS)は天然ガスに水素を混ぜて燃やす混焼試験に着手している。こちらもすでに技術的には水素100%燃料での発電は可能になっているという。既存の天然ガス燃料の火力発電所で燃焼器を取り換えるだけで水素発電に転換できる技術開発が進む。18年1月には発電用の大型ガスタービンで水素30%の混焼試験に成功した。従来の天然ガス火力に比べて発電時のCO2排出量を1割ほど減らせるという。同社は24年にオランダで既存の天然ガス火力を水素100%燃料に切り替える事業を計画しており、高砂を中心に実証を続ける。

オーストラリアで採掘した低品質で安価な石炭「褐炭」から水素を精製し、現地で液化して専用船で神戸まで運ぶプロジェクトも進展しているが、液化水素運搬船の建設が必要となる。同時に、オーストラリアの褐炭から水素を作り、そこで発生するCO2を捕捉して地中に埋める技術も開発しなければならず、具体化にはもう少し時間がかかるだろう。これが日本に入ると、大量の水素利用技術の普及が不可欠となる。今後この技術開発の競争が進むだろう。