効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

■黒液をゴム原料に

製紙過程で発生する黒液(リグニンが主体)は、これまで、燃料として使われてきた。だが、産業技術総合研究所(AIST)は、黒液をゴムの原材料に利用する経済性がある技術を開発したということだ。ジメチルエーテル(DME)を経由するルートが最も収率が高く、1,3-BDの流通価格が一定以上になった場合、高い利益が見込めることがわかった。DMEを経由する実際のプロセスに、現在利用できる触媒を用いて1,3-BDを合成した場合(現状ケース)は、経済性は見込めない。経済的な1,3-BD合成プロセスの実現には、触媒の改良が不可欠となる。

産総研では、木質系バイオマスをガス化し、得られた合成ガスから、燃料やさまざまな基礎化学品への変換技術の開発を行ってきた。とくにリグニンは、他のバイオマス原料と比較し炭素含有率が高く、CO2よりCOが生成しやすくなるため、合成ガスが高収率で得られる。この研究では、リグニンをガス化し、合成ガス経由で1,3-BDを効率的に合成するプロセスを着想し、シミュレーションによる効率性(利益)の調査研究に取り組んだのだ。

1,3-BDは、汎用性の高いゴムや樹脂の原料として幅広い用途を持ち、今後輸送機器の軽量化に伴い、需要の増加が予想される。現在1,3-BDは、主に石油由来のナフサからエチレンを合成する際の副生物として得られている。しかし、ナフサ由来のエチレンの減産に伴い、1,3-BDは供給量の低下や値上がりが懸念されている。たとえば、ここ数年で1,3-BDの流通価格は、1,500から3,000$/t(2016年の最高値)と大きく変動しつつ、上昇傾向にある。

地球温暖化防止の観点からは、バイオマス由来の化学品を製造する技術開発が注目されている。中でも製紙工程で副生するリグニンはバイオマス資源の1つであり、有効に活用する技術が模索されてきた。ゴムの製造に使うと、カーボンが固定されるが、発電量燃料に使うとカーボンは炭酸ガスとして放出される。バイオマス起源だから一応カーボンニュートラルとはなるが、固定できる方が望ましい。経済性については、電力価格とも関係する。ともあれ、新しい資源となる方策が実用化されるのは嬉しいことだ。