発電、工業プロセスなどに使われたエネルギーは、最後には利用できない熱が、温度差はあるが廃熱として捨てられる。この廃熱が利用できればエネルギー効率を大きく上げることができる。使えない熱も、その場であれば何かに使うことができるが、適当な利用ができるものが隣接しているケースは少ない。だから熱を貯めて離れたところに移送することができれば良いのだが、その途中で温度が下がってしまうため利用効率が低く、コストも下がらない。それを解消できるかも知れない材料が開発されたと報じられている。東京大学と筑波大学が、永続的に熱エネルギーを保存できる物質を発見したと発表した。「蓄熱セラミックス」と呼ばれる新材料で、蓄熱したエネルギーを60メガパスカルの圧力を加えることで自在に取り出すことができる。顔料や塗料として用いられる「ルチル型二酸化チタン」を焼くだけで得られるそうだが、コストを抑えつつ、水の融解熱の約70%に相当する熱エネルギーを吸収・放出することができる。保存した熱エネルギーは、ピンヒールのかかとにかかる圧力の5倍に相当する60メガパスカルを加えることで取り出すことができる。日中得られた太陽熱エネルギーや溶鉱炉の廃熱エネルギーを効率よく蓄え、夜間の発電・暖房などとして、必要なときに圧力を加えることで熱エネルギーを取り出すことができるし、感圧シートやカイロなどとしての応用も期待できるということだ。素材として特殊なものではないから、応用商品化は意外に早いかも知れない。