効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

■日米欧、水素・燃料電池分野で協力強化

経済産業省欧州委員会エネルギー総局(ENER)、米国エネルギー省(DOE)は6月15日、水素・燃料電池技術に関する三国・地域間の協力を強化することを確認し、共同宣言を発表したと報じられた。この共同宣言は、長年の間、水素・燃料電池分野をリードしてきた日米欧が、その協力関係を強化し、世界における水素利活用の拡大を図ることを目的とするものだとされている。

日米、EC諸国での燃料電池開発は、重点の置き方がかなり異なる。日本は燃料電池自動車の開発と家庭用燃料電池の開発で先行してきたが、米国では規模の大きな燃料電池の開発に力点がある。固体高分子電解質型のものの開発は日本も力を入れてきたが、カナダも有力な企業が存在する。ECでは燃料電池についてはそれほど実用化技術を開発したとは言えないだろう。

水素については、以前にも書いた燃料電池駆動の列車などを実用化し、水素の大量供給を具体化しようとしている。だが、その燃料電池はカナダのメーカーのものが採用されている。JR東日本が開発する燃料電池列車もカナダ製の燃料電池を使うということだ。これから洋上風力発電が拡大すると共に、グリーン水素の利用方法がいろいろ試みられるだろう。その水素利用については、米国も力を入れ始めている。日本は大量の水素利用については若干遅れ気味ではないかと思える。これらの不均等な進展を平準化しようとするものだろう。

水素の利活用をグローバルな規模で推進し、関係各国が歩調を合わせ一層の連携を図るプラットフォームとして、水素閣僚会議が2018年に世界で初めて日本で開催されている。2018年は、21の国・地域・機関より閣僚等が集まり、300人以上の水素に関連する企業・政府関係者と研究者が参加し、エネルギー転換・脱炭素化に向けた水素の重要性や、水素関連技術の現状と将来に向けた展望、水素が将来的にビジネスとして自立できるマーケットの創出に向けた国際的な連携の必要性などについて、積極的な議論を行い、会議の成果として「東京宣言」を発表している。

ともかく、水素の重要性はこれから大きくなるが、消費量の拡大がどこから始まるかは各国の間でかなり異なってくるような感じがする。

■G20 エネルギー・環境閣僚会議

20カ国・地域(G20)エネルギー・環境相会合が軽井沢で開催されたが、幾つかの合意がなされている。エネルギー分野の共同声明は火力発電で出た二酸化炭素CO2)の再利用や環境負荷の少ない水素エネルギーでの協力に合意した。水素については生産コストの引き下げに向け、各国で異なる規制が投資を妨げることがないよう基準を統一するなどの連携を進める。水素については、近い将来再生可能エネルギーを使って水電解などで生産されるグリーン水素に期待が持たれるが、この電解技術は別に目新しいものではなく、電解設備のコストダウンが鍵となる。また、再エネを使う場合、限界コストはゼロだから、生産量が増えればコストは下がると考えても良いだろう。

地球温暖化に関係するCO2の排出については、石炭火力からの排出量が多い。欧州各国が石炭火力の中止に動く一方、「(電力インフラが乏しい)発展途上国などは使わざるを得ない」(世耕弘成経済産業相)とのことだが、どうもこれは炭酸ガス回収技術を開発して海外に輸出しようとする日本の思惑が強いように思える。

省エネルギーの項目では電気自動車(EV)の燃費評価で、電力を作る過程で出たCO2排出を含める「ウェル・ツー・ホイール(油井から車輪へ)」についてG20各国が「留意する」との記載が入った。充電に消費される電力が何を使って得られるかによっては、EVの環境評価は変わってくることを確認したと言うことだ。これまでは走行時のエネルギー消費に着目した「タンク・ツー・ホイール(燃料タンクから車輪へ)」が主流だったが、日本が取り入れた環境重視の評価手法について一定の支持が得られたのはかなりの意味がある。

どれに関しても水素が軸になるが、それを利用する燃料電池について、燃料電池駆動の列車について自分が書いた4ぺーじも掲載されている雑誌「工業材料7月号」(日刊工業新聞)が昨日発刊された。まだ自分も入手していないのだが、多方面にわたる水素と燃料電池の利用について多角的に書かれているはずだ。読んでいただければと思っている。

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■洋上風力発電 北電が参入?

報道によると、北海道電力613日、石狩湾を開発候補地として洋上風力発電への参入を検討すると発表したとのこと。電力供給の100%を再エネ由来の電力で賄う企業団地「REゾーン」の整備を計画している石狩市再生可能エネルギーの開発促進に向けた連携協定を結んだのだ。両者は(1)再エネの開発促進に向けた協力体制の構築(2)石狩湾新港地域「REゾーン」の実現に向けた手法の検討(3)再エネの利活用を軸とした産業の育成検討(4)地方創生につながる地域密着型ビジネス等の実現方策の検討――といった4項目について連携する。

自治体で再エネの使用を拡大しようとする動きが各地で見られるようになっている。東京都は、都庁本庁舎(東京・新宿)で使用する電力を81日から再生可能エネルギーに切り替える。都は2050年までに二酸化炭素CO2)排出量を実質ゼロにする計画を打ち出している。まず自らが実践し、民間などの取り組みをリードしたい考えだ。ただ、日立造船から電力を調達するのだが、この場合の再エネはどうも生物由来とされる分を実質的にCO2ゼロの再生可能エネルギーとして使うというかなりいかがわしいもののような気がする。

それに比べると石狩市の動きは正真正銘の再エネだが、これには他の事業者では対応できなかった系統容量の確保があっただろう。石狩湾は札幌市に近いから送電網の容量は大きいのかも知れないが、接続可能量などの情報は北電が知りやすい立場にあることが有利だった可能性もある。今回石狩市が計画している企業団地の需要規模がどの位かにもよるが、企業団地は夜の需要が少なくなるのに対して、風力発電は夜に発電量が大きくなることも多い。余剰分をどこかに回せなければ蓄電しなければならないが、その周辺の処理の仕方がどうなっているかをこれから教えて貰いたいものだ。北海道では風力発電の導入に上限があるのをどのようにクリアーするのかに興味がある。

■CASA年次総会と第27回地球環境市民講座

朝の9時前に家を出て、天満橋にあるドーンセンターへ出かけた。午前中にあった認定NPO法人地球環境市民会議(CASA)の第19期通常総会に出席し、午後にCASAが開催した環境市民会議にも出席した。荒れ模様の天候が予想されていたが、雨には遭わず会場に入ることができたのは有り難かった。

総会には30人ほどが出席していたが、予め議事内容や資料を受け取っていたので格別のことはなかった。自分が意見を述べたのは、会員数が伸びないということだ。CASAが始まった頃に会員になった人達が高齢になり、退会するようになっていることが一つの理由。そして、なかなか若い会員を獲得できていないことだった。環境問題には一般社会も関心を高めているはずだが、同じような趣旨の団体が増えて競合していることもあるだろう。今後団体企業として企業を呼び込むことも一つの方策かも知れない。

午後からの市民講座では会議場が一杯だった。講師は、最初に国立環境研究所の地球環境研究センター副センター長をしておられる江守正多氏が「1.5度C特別報告書~内容と意義」というテーマで、次いでCASA専務理事の早川光俊氏が「パリ協定と日本の課題~世界の動きを見ながら~」というテーマで話をされた。危機的な状況にある地球環境の現在と未来について、世界の対応を知ると共に、日本がいかに曖昧な対応をしているかを改めて確認させられた。全体としては自分の理解と大きな隔たりがなかったのが、良かったのかどうかは分からない。

紹介されたもので興味を惹いたのは、鳥取の賀露おやじの会という妙な名前のNPO法人が、木の板材に正確な切り込みを入れて、接着剤やネジ釘を使わずに家具やモデルを作れる素材を開発して販売しているということだ。孫の遊び道具としても面白そうだと思ったが、展示のみで販売はしていなかったので、直接発注しようと思っている。

ここのホームページは、http://kudeju.com

■ホルムズ海峡の奇

ホルムズ海峡を通過し、日本に向かっていた二隻(一隻は日本企業が保有)のタンカーが魚雷攻撃を受けたという緊急ニュースが流れたのを知って、これは明らかに仕組まれたものだと思った。安倍首相がイランを訪問して最高首脳の二人との会談を終えてすぐのことだから、安倍首相がトランプ大統領とイランの仲介をしようとするのを妨害しようとしたものではないかと思える。すぐざま米国はイランが攻撃したと発表しているが、その発表までの時間が短いのに疑問を感じている。米国自身でなくとも、密接な友好関係を持つ国の行為だったかも知れない。最初は砲撃と報じられたが、すぐ、魚雷によるものだとされ、それに続いて、不発弾の回収に攻撃した組織が船を出したという、これも奇妙なことにまで発展していった。潜水艦を持つ国は少なくないだろうから、追跡は難しいかも知れないが、それをどうして米国の警備艦や航空機が簡単に発見できたのだろうか。事態の解明には時間がかかる、あるいは、分からないままで終わるのかもしれない。

この事件を知って思い出したのが、最近亡くなった堺屋太一氏が昔書かれた「油断」という本のことだ。日本はエネルギー調達という側面で、常に崖っぷちに立っていると警鐘を鳴らされたのだが、その状況は現在でもほぼ同じだろう。中東以外に石油の輸出をする国として新しく米国が登場し、勘ぐりに過ぎるかも知れないが、その売りつけのためにこの事件を起こしたのかもしれない。現在進行中の貿易交渉にあたって、日本に石油を使って恩を売ることも考えられる。ともかく、今も日本は油断に怯えなければならない状況に置かれている。これで自国内のエネルギーを確保する必要があるという論調が強くなるだろう。それは原発の維持、新設という方向にも向かうだろう。避けたい道筋だ。

 

■太陽光や風力発電、買い取りから入札へ

ほぼ想定されていたことだが、経済産業省は太陽光や風力発電の事業者がつくった電気を大手電力があらかじめ決めた価格で買い取る制度を終了し、新たな競争入札制度を導入してコスト低減を進める。当初高かった買取価格も大幅に安くなったが、固定価格買取制度が始まった頃の買取価格は変わらないことから、それが上乗せされる電気料金の割高感が言われている。買い取り費用は19年度で約3.6兆円にのぼる。うち家庭や企業に転嫁する分は約2.4兆円まで膨らみ、見直しの必要性が指摘されていた。経産省は対策として、ドイツなど欧州各国がFITの替わりに導入を進めている方式を取り入れる。しかし、家庭用の消費者はほとんどそれを受け入れて大きな不満にはなっておらず、大半は事業用の電力を使う需要家の不満だと思う。ドイツでは家庭用と事業用の電力価格への上乗せに差を付けて、産業への影響を少なくしていたが、日本は全て同じ金額が上乗せされている。制度設計思想の違いもあるようだ。

50~100キロワット超の中・大規模の太陽光や風力の事業者には、自ら販売先を見つけたり、電力卸市場で売ったりすることを求める。価格は取引先との交渉や市場の状況で変わることになる。固定買い取りのメリットをなくす替わりに、卸市場で電力価格が急落し基準価格を下回った場合は国がその分を補填する。この措置を受けられる事業者は基準価格に関する競争入札で選ぶ。入札に参加する事業者は自社の発電コストを考慮しながら基準価格の候補を出し、経産省はその価格が低い順に一定数の事業者を認定する。基準価格は落札した事業者ごとに違う価格になる見通しだ。入札は数カ月ごとなど定期的に実施する。小規模の事業用太陽光や家庭用の太陽光では買い取り制度自体は残すが、買い取りは全量でなく自家消費で余った分だけにする。買い取りにかかっていたコストは大幅に削減できる見込みだとされている。

水力発電バイオマス発電、温泉熱発電などはこの新制度の対象にはなっていないようだが、全体に共通する課題として、再エネ発電設備が連系される系統容量の不足は今後も長期にわたって続くだろう。その解消にはかなり政府の支援が必要となるが、具体案はまだ見えていない。

 

■チリの環境問題

今年の12月に、国連の環境問題会合がチリのサンチャゴで開催されることになっており、世界各国から各国首脳を含む2~3万人の人が集まることになっている。チリ政府は、それに備えて、地球温暖化を抑制する目標達成に向けた各国の対応に歩調を合わせようと、今週、新しい気候変動太陽プランを今週発表している。その中で、チリ大統領は、2040年までに全ての石炭火力発電所を停止し、2050年には、同国で、炭酸ガスの排出と吸収が均衡するカーボンニュートラルを実現すると表明している。しかし、グリーン化を推進する政治家や、南米諸国からは、チリ政府に対して、石炭火力発電所の閉鎖目標を早めるべきだとする要請がなされている。これから5年内に8基の石炭火力を閉鎖するという計画になっている。

2015年12月に200国近くが賛同して採択されたパリ協定は、世界の気温上昇を摂氏2度以内に抑制し、さらに1.5度を実現する努力をするとしている。しかし、現在のカーボン排出の傾向を辿ると、3度の上昇が避けられないレベルとなっているようだ。会合を主催するチリ政府は、パリ協定に対応するために、そのGDPに対応する温暖化ガス排出を2030年迄に2007年比で30%引き下げようとする施策を出そうとしている。温暖化抑止を研究している組織からは、チリの計画では、経済成長も実現しようとしているために、2030年には排出量は41%になるから不十分だと批判している。

 チリでは最近これまでに経験したことのないほど強い竜巻に襲われた地域もあり、異常な干ばつも経験し、果物の栽培地域を移動させなくてはならないほどになっている。氷河も縮小中。これらは今後さらに悪化すると専門家は予測している。一方、石炭火力の稼働している地域では、大気汚染が進んでおり、温暖化より早く具体的な対応が必要になってもいる。

一方、石炭火力の閉鎖は雇用の喪失を招くと同時に、電気料金が大幅に上がることになることが憂慮されている。だが、政府は、チリは再生可能エネルギーが豊富であり、それに代替すれば大きな問題にはならないとしている。政府が発表した温暖化対応計画が最終的に施策として議会が承認するかどうかはまだ未定だとのこと。12月の会合までには決着すると言われているが。