効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

■琵琶湖の湖水全層循環

昨日のNHK-TVで知ったのだが、琵琶湖の湖水に毎年起こっていた全層循環が今年は起きていないのだそうだ。びわ湖の「全層循環」は、冬の間に温度が下がった湖面近くの水が沈んで湖底の水と混ざり合い、湖全体の酸素濃度がほぼ同じになる現象で、生態系や水質の維持に必要とされ、通常は毎年1月から3月の間に確認されているもの。滋賀県が毎年調査してきたものだが、これが起きないと、琵琶湖の水の撹拌が十分に行われず、この湖の生態系にも影響するはず。

県の琵琶湖環境科学研究センターは週1回、水深が最も深い地点がある北湖で酸素濃度や温度を調査しているが、8日、5つの地点で調査したところ、1地点で酸素濃度が1リットルあたり5ミリグラムと例年の半分にしか上がっていないことがわかった。県は、これからの時期は湖面の温度が上がるため水が混ざるのは難しいとして、9日、「ことしは全層循環が確認されなかった」と発表したものだ。県が昭和54年に観測を始めて以来初めてのことだという。原因については去年の夏以降、気温が平年より高く湖面の温度が下がりきらず、水が混ざりにくくなったためだとしている。冬に湖水表面の温度が下がらなくなったのは、今後も続くだろう。明らかに地球温暖化により起きたマイナスが具体的に見えた現象だと言える。琵琶湖は水深が平均的に浅いから、そして、冬の気温が大きく下がって水面を冷やすのが通常であるため、温度が下がって比重が大きくなった表面の水が下降し、湖底の相対的に高い温度の水が上昇して、全体が緩やかに循環を続けるのだが、今年の冬の平均気温が琵琶湖周辺ではこれまでのように下がらなかったのだ。

このような循環を示す湖水が他にあるかどうかは報じられなかったが、同様なことが起きている湖水はあるはず。また、世界の海面の温度がこれまでのように下がらなくなったことが、最近よく起きている魚の回遊が異常になっていることの原因の一つかも知れない。恐ろしいことになってきた。

 

■クレーンによる重量物上げ下げをAIで制御した蓄電装置

スイスとカリフォルニアに本拠を置いたベンチャー、Energy Vault社、が面白い蓄電装置を開発した。系統に使われる大型蓄電池は、何回も充放電をすると劣化するし、その材料もレアーメタルを使っていてコストは高く、埋蔵量にも限度がある。このような課題を解消する蓄電システムを、円筒状に積み上げるレンガとクレーンの組み合わせで作ったという。

電動モーターで駆動するクレーンで重いレンガをつり上げ、再エネからの電力がなくなったときに、レンガを重みで下げてやり、その時に下に向かう力でモーターを発電機に利用して発電する。その操作を全てAIで行うというものだ。これを開発するヒントになったのは、水の重力(落下力)で発電し、水を汲み上げるときに電力を消費する揚水発電だったそうだ。水を大きな重いレンガに置き換えるという発想だ。揚水発電に必要な地形の落差がなくても発電出来る。

このレンガは廃棄された土砂で作り、そのコストは小さい。また、長期に使用しても劣化することはないし、安全に稼働させることができるという。このクレーン発電設備のkWh当たりコストは、同等規模のものの半分になると計算している。運転コストも少なくて済む。設備の寿命も30年を超え、その間劣化は起こらないとしている。(クレーンの補修は必要だとは思えるが。)この設備の容量は、10MWhから35MWh、発電能力は2MWと5MWの間であり、効率は90%を超えるとのこと。また、系統安定化に向けたアンシラリーサービスに対応できるだけの早い応答速度も持つ。建設コストは設備規模に応じたものになるが、土砂をセメントで固めるコスト、重量物を支える地盤の強化、原料の廃棄土砂のコストが主要なものとなるとしている。

どのようなものか、形状を想像することが難しいが、Energy Vault社のホームページにそれがある程度分かる動画が準備されている。

https://energyvault.ch/

必要に応じて複数のレンガをクレーンで挟んで上下させるもののようだ。

■IEAのレポート

国際エネルギー機関(IEA)は世界全体のエネルギーとCO2に関する現況報告をこの3月に発表している。英文だが、IEAのBookshopから無料でダウンロードできる。

それによると、2018年での世界全体のエネルギー需要は2.3%増加したが、2010年からの伸びの平均の2倍の大きさということだ。世界経済が極めて好調であり、一部地域における冷暖房の需要が増加したことなどがエネルギー需要増加の原因としている。エネルギー需要はすべての燃料に対して増加しており、化石燃料は17年に続き、成長した分の約70%を賄っている。増加した燃料のうち45%は天然ガスが占めている。

世界中で増加する電力需要の伸びに電力の供給が追い付かず、石炭の消費も増加している。その結果、18年の温室効果ガス排出量は世界全体で1.7%増加し33ギガトン(Gt)となった。石炭火力発電による排出量は10Gtを超え、全排出量の約3分の1を占めた。エネルギー需要の増分のうち約20%は冷暖房の需要が高まったことに起因しており、これは一部の地域における冬季や夏季の平均気温が過去の記録以上に低かったり高かったりしたためだとしている。冬季の寒波が暖房需要を活発化させ、夏季の気温上昇が冷房需要を押し上げたからだ。

石油の消費は1.8%の伸びを示したが、この大本は米国で大幅に伸びたことにあるようだ。天然ガス金融危機の時期に低迷していたものが2010年に回復して以来最大の4.6%増大。エネルギー需要の増大に加えて、石炭を代替する燃料としての増加も大きい。石炭も2年続けて増加しているが、エネルギー供給に占める役割は下がっている。

再生可能エネルギーでは2018年に4%増加し、世界のエネルギー需要増加の4分の一を賄うまでになっている。再エネによる電力の伸びがこの10年間もっとも大きくなっている。世界の太陽光と風力がいずれも2ケタ成長を示し、需要は太陽光だけで31%増加したという。地域別では、これまで通り中国が再エネのけん引役である。風力と太陽光のいずれについても中国がトップで、欧州や米国が続く。

■日本で白熱電球生産がほぼなくなった

メトロ電気工業(愛知県安城市)は、1913年の創業時から手がける白熱電球の生産を今夏までに終了するとのこと。パナソニックなど大手は可成り前に製造を打ち切っていたが、同社はOEMも含めてこれまで細々と生産を継続してきた。日本での製造はもっと前になくなっていると思っていたのだが、ここまで頑張ったことに、いささかの感激もある。会社が無くなるのではなく、カーボンヒーター管事業に経営資源を集中するという。メトロ電気の19年3月期の売上高は32億円の見通しで、白熱電球事業は10%強。こたつ用熱源ユニットが主力だが伸びが見込めず、現在は赤外線ヒーターの一種、産業用カーボンヒーター管事業に注力している。

昔受験勉強を暖房もない部屋でしているときに、手元照明の電球に手をかざして温めたのを覚えている。1879年にトーマス・エジソン白熱電球を発明し、そのフィラメントに日本の竹が素材として使われたということ、物語になっているが、近代文明の一部を支えてきたものが、新技術の登場で消えていくのは寂しいことだ。十分その役割を果たしての退場だが、コスト競争に敗れての生産中止ではないのが救いか。

■送電網に財政支援 再生エネ普及へ経団連提言

経団連が近くまとめるエネルギー政策の改革に向けた提言で、再生可能エネルギーの普及を底上げするため、送電網の整備を国が資金面で支援するよう求めると報じられている。送電網の容量不足が再生エネの普及の足かせになっているとの指摘が多く、国が財政投融資の活用で支援するよう要請し、国内で約8割を占める火力発電への依存度を下げ、地球温暖化対策をさらに進めるという内容のようだ。

しかし、安易に送電網の強化を提言し、しかも、国の金でやるようにということだから、電力、それも送電網を保有する旧電力事業の意向を受けたものに違いない。地球温暖化対策という隠れ蓑の影で、系統増強より前になすべきことをせずに、税金を使わせようというものだ。系統増強が必要だとしても、そのコストは本来的には2020年の完全自由化後の送配電事業者が負担して、それを利用する大手を含めた全ての電力小売事業者が負担し、それを最終的に電力消費者が負担すべきものだろう。その原則の上にたって、国の資金を使うかどうかは判断されるべきものだ。

さらに、系統増強より前に、再生可能エネルギー導入の可否を左右する送電系統の空きがどのように分布しているかをきっちり情報として示す必要があるだろう。2020年から送配電事業は小売事業とは別事業になるが、旧大電力会社の傘下にはグループ会社として残るから、大電力ホールディング会社の収益性を左右する。だから、送電系統の強化コストを増やしたくない。現在再エネ事業者が系統接続をするときには、系統増強が必要であればそのコストは再エネ事業者が負うのが通常だ。しかも、系統増強が必要だとする理由の背景が必ずしも明示されてはいないようだ。欧米では、(とは言いたくないが)、再エネは優先接続され、それに必要なコストは系統側が負担することになっている。送電系統の利用状況も詳細には開示されていない現状を改め、公正な公開ができるようにする制度設計をすることが望まれる。それを抜きにした今度の経団連の提言は、あまり真面目に対応する必要はないだろう。電力広域的運営推進機関の位置づけも明確にするということも重要。

■再生可能エネルギーの出力抑制

Facebookで、京大の安田 陽先生がインタビューを受けた記事が朝日新聞に今日掲載されていると述べておられた。再エネの出力抑制についてだったが、それに対する自分のコメントを書いてから、同新聞を買いに出かけた。最初に目指した新聞店に行くと、空き屋になっている。店をたたんだようで、移転したのか商売をやめたのかは分からなかった。仕方がないので、バスで近鉄学園前まで行き、そこのコンビニで入手。最初のコメントは全文を読む前に書いたので、間違った反応をしたのでは、と思ったが、それほど見当違いのコメントをしたのではなかったようだ。

インタビューの標題は「再生エネの出力抑制 長い目で見ると得」、「隠れた費用」が少ない電源 一部を捨てても導入増を目指せ  

九州電力では今日も太陽光発電の出力抑制を行ったようだが、昨年10月に初めて抑制を行った時にメディアが大きく取り上げて、その内容に安田先生が強い違和感を持ったということについてインタビューし、11面全体にその一部始終が掲載されている。先生によると、報道の多くは表面的で、何のための出力抑制かが十分伝わっていなかったと感じられたそうだ。そして、再エネが増えれば出力抑制を求められる時間も増えるが、そんな一部を捨てても年間を通した再エネの発電電力量を増やすことを目指すべきだ、と述べておられる。そして、そこでの判断基準は「便益」と「隠れた費用」にあると強調しておられる。

これに対する自分のコメントは、天候予測で出力抑制が必要になるかどうかは予め分かるから、それに対応して原発もある程度の出力抑制をするべきではないか、というものだった。その後調べて見ると、欧州では原発も出力抑制することが、再エネ導入量を増やすのに望ましいとするポジションペーパーが、欧州原子力産業協会(FORATOM)から出されていることが分かった。ただ、日本の原発がここで述べられている柔軟性を持つような設計になっているのかどうかは分からない。九電の今日の発電状況を調べてみると、どうも稼働できる原発は全てフル稼働のようだ。安全性に影響があるとすれば避けるべきだが、午前中から2割ほど出力を下げて運転すれば、太陽光発電の出力抑制を少なくはできるし、使用済み核燃料の発生量も抑制できる。九電の保有する原発にこのような柔軟性があるかどうかはもう少し調べないと分からないから何とも言えないが、現在国が定めた方式では、原発地熱発電の出力抑制はしない前提になっている。

安田先生は、原発と並列に議論するのは避けるべきだと言われるかも知れないが、この辺りを見直すことはできないのだろうか。

これと同時に、自家発などの出力を下げる(系統からの電力を使う)などの需要制御システムの導入も検討すべきではないだろうか。

■ウナギの完全養殖

このところ日本各地の漁港で、不漁であったり、魚の捕れる時期が大きくずれたりすることが報じられている。さらには、海苔の不作も伝えられている。その原因の主たるものは、海水温の大きな変化にあることはまず間違いないだろう。それへの対応として考えられる一つが養殖。

水産総合研究センター(現・水産研究・教育機構)は2010年4月8日、ウナギを人工的にふ化させて親に育ててから卵を取り出し、さらにふ化させて2代目をつくる「完全養殖」に世界で初めて成功したと発表した。その報道記事では、02年に水産庁養殖研究所(当時)が人工授精の卵から稚魚(シラスウナギ)に育てることに成功。成長した稚魚にホルモン注射を繰り返して成熟させ、人工授精した卵からさらに稚魚を育てた。そして、18年7月、人工養殖した稚魚約300匹を鹿児島県志布志市養殖場に提供したという。成魚まで養殖し、商業化を目指す取り組みだ。完全養殖でウナギの量産が実現すれば、国産ものを安定した価格で入手できると期待を集めているようだ。

日本の食卓に上るウナギのほぼすべてが養殖もの。現在は天然の稚魚を捕獲して育てており、資源の枯渇が懸念されている。ニホンウナギは野生での絶滅の危険性が高い。その稚魚の捕獲が毎年難しくなっていて、養殖を維持することも難しいのが現状。その意味で、完全養殖に成功したというのは、まだ規模は小さいとは言え、大きな成果だろう。

ウナギに止まらず、他の魚についても養殖が拡がっていて、ふぐの養殖も行われるようになっているそうだ。山の中で養殖すると、ふぐの毒がほとんど無くなるようで、新しい商品になる可能性もある。海水中にあるプランクトンを食べないために毒が作られないらしい。

もう少ししたら、自分たちが食べる魚の多くが山でとれるということになるかも知れない。